今回は酒米の王様「山田錦」について解説します。
日本酒売り場では必ず見かける「山田錦」が一体なんなのか解説していきます。
日本酒初心者からエキスパートの方まで山田錦について学べる内容になっています。
それではどうぞ!
山田錦とは
山田錦とは日本酒の原材料であるお米の銘柄を指しています。
お米というと「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」のような白ご飯で食べる「食用米」を想像しますが
山田錦は日本酒を美味しく作るために開発された「酒造好適米(酒米) 」です。
基本的に食用米では日本酒は作りませんし、酒米は白ご飯用としてスーパーに並ぶことはありません。
これが酒米の王様である理由 山田錦の特徴
山田錦が日本酒用のお米ということがわかったところで、続いて山田錦の特徴をみていきます。
兵庫県で誕生した山田錦は、酒米の中で生産量がNo.1で他の主要銘柄と比較してもその差は圧倒的。
2009年からNo.1の座を譲っておらずまさに「酒米の王様」と言えます。
この需要の高さは、山田錦が日本酒作りに適した特徴を持っているからこそです。
山田錦は大粒であり、千粒重というお米1000粒の重さが27〜28gです。
大粒であるほどお米を削る精米作業のときに割れにくくなるため、高精米が必要となる吟醸酒に適した酒米です。
心白は酒米の中心部にある白い部分であり、心白無しに日本酒を作ることはできません。
そのため心白発現率が大切であり、70%の心白発現率を持つ山田錦はとても優秀です。
また、えぐみの原因となるタンパク質の含有量が少なく日本酒にしたときの味わいが抜群です。
このように日本酒を作る上で優れた特徴を持つため山田錦は酒米の王様になったのです。
銘柄 | 千粒重 |
---|---|
山田錦 | 27〜28g |
五百万石 | 25.8g |
美山錦 | 26.0g |
雄町 | 27.3g |
食用米 | 20〜24g |
山田錦の歴史
山田錦をより深く知るために、山田錦の歴史についてご紹介します。
- 1923年兵庫県で「山田穂」と「短稈渡船」で交配スタート
- 1936年選抜品種を「山田錦」と命名
- 1990年前半吟醸酒ブームで脚光を浴びる
- 2001年五百万石の生産量を抜いて酒米の中で生産量No.1
- 2019年酒米生産量の約40%を占める銘柄となる
さらに深堀り 山田錦の豆知識
最後に山田錦の凄さをより知っていただくための豆知識をご紹介します。
その1 全国40府県で生産
山田錦は最も生産されている酒米であり、2019年度には全国40ヵ所の府県で栽培されています。
このように全国で広がりを見せる山田錦ですが、実は栽培するのは簡単ではありません。
山田錦は稲の茎の長さ(稈長)が比較的大きいため、稲が倒れてしまう(倒伏)可能性が高いんです。
また病気に対する抵抗力(耐病性)が低く、素早い対処が求められます。
このように山田錦の栽培は手間がかかります。
しかしその手間をかけてでも栽培するほど、山田錦には魅力が詰まっているということですね。
その2 戦前の食糧難がきっかけでNo.1に!
山田錦が誕生した1936年は第二次世界大戦が始まる直前でした。
多くの酒造メーカーは開発されたばかりの山田錦よりも、慣れ親しんだ酒米で日本酒を作っていました。
しかし、戦争が始まると1942年の食糧統制によって県外からのお米を使用できなくなりました。
そのため兵庫県内の日本酒作りを全て県内のお米でまかなわなければなりません。
そこで地元の酒米である山田錦を使わざるを得なくなり、実際に使ってみるとその優れた酒造特性から戦後も山田錦は生産を伸ばすことができたのです。
その3 山田錦は実は違う品種名がつけられる予定だった
山田錦が実は当初の品種名が「山田錦」ではなかったことをご存知でしょうか。
当初の品種名候補は「昭和」だったようです。
ではなぜ「昭和」ではなく「山田錦」という品種名になったのか。
残念ながらその理由を記した資料や伝承がなく現在も謎に包まれています。
おわりに
全国各地で生産されている山田錦は決して簡単に作れる酒米ではありません。
農家の方々が手間ひまをかけて山田錦が生産され美味しい日本酒の根幹となります。
これからも山田錦だけでなく色んな酒米に目を向けて、より日本酒を楽しんでください!